IHGsokenの日記

中小企業診断士 兼 証券アナリスト による財務分析よりも手前の基本的な疑問点について考える

【就活生向け】就職希望企業ランキング企業分析 ~JAL vs ANA~

こんにちは、IHGsokenです。

新卒採用業務に携わった経験から今回は就活生向けに企業分析をしていきたいと思います。

就活の人気企業ランキングは複数社が発表していますので、一概に決まったランキングはないのですが、今回はキャリタスさんが発表されている「2021年卒の就活生が選ぶ人気企業とは?~就職希望企業ランキング:総合編~」を参考にさせていただきました!

https://job.career-tasu.jp/2021/guide/study/ranking/1_1.html

この中で見事5位、6位にランクインしましたJALANAの2社を取り上げます。

 

まずは、BSの形から確認していきましょう!

 

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2020/6/30期(※JALIFRSANAは日本基準)

同じ航空業界ということもあり、非常に似ている形をしています。

強いていうと、ANAの方が固定負債の割合が大きく、純資産、利益剰余金の割合が小さいということが言えるかと思います。

JALは、2010年1月に経営破綻していますのでその影響が大きいかと思われます。)

 

続いて、2020年3月末からコロナ禍の影響がBSにどの程度出ているのかを見てみます。

まずは、JALから。

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JAL

BSで最重要で確認していただきたいのが、「利益剰余金」です!

 利益剰余金とは、企業が生み出した利益を積み立てたお金で、会社内部に蓄積されているものを指します。企業会計において貸借対照表の純資産の部に記載される、株主資本の一部です。

利益が増えれば利益剰余金は順調に増えますが、赤字決算が続くと利益剰余金は減少し、いずれマイナスに陥ります。利益剰余金が少ないということは、利益の蓄積が少なくなっていることを意味し、それだけ経営状況が厳しいと判断されます。

SMBC日興証券「初めてでもわかりやすい用語集」より引用)

https://www.smbcnikko.co.jp/terms/japan/ri/J0547.html

( 利益剰余金が減っていき、公募増資で補うということも過去の企業では少なくありませんでした。)

今年の3月時点で6,454億円あった利益剰余金が6月末時点で5,514億円まで減少しています…。3か月間で▲940億円の減少です…。毎月313億円減っているということです。このペースでいくと17ヶ月ちょっとで利益剰余金がマイナスになってしまいます。

 

利益剰余金がマイナスになるということは、業績が悪化していることを意味します。業績悪化が続けば蓄積してきた利益剰余金が取り崩されていき、いずれは底をつきマイナスになるのです。

ただ、利益剰余金がマイナス=債務超過ではありません。債務超過とは純資産の合計額がマイナスに陥ってしまった状態です。

利益剰余金のマイナスが積み上がり、資産の他の項目にまで影響を及ぼすようなると債務超過になる可能性があります。

https://meetsmore.com/services/tax-accountant/media/48988#i-3

 この状況はANAも同じです。

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ANA

ANAも、3月末時点で5,508億円あった利益剰余金が、6月末には4,409億円に1,000億円以上減少しています。こちらは毎月▲366億円のスピードで利益剰余金が減少しています。12ヶ月でマイナスになりかねません…。

 

では、なぜ利益剰余金が減少してしまうかというと、

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ANA(2020/6/30期)

経営成績が赤字であった場合の当期純損失を計上した場合、利益剰余金の減少となります。

このまま、コロナ禍の影響で、純損失を計上し続けた場合、利益剰余金のマイナスになりかねないということです。