IHGsokenの日記

中小企業診断士 兼 証券アナリスト による財務分析よりも手前の基本的な疑問点について考える

食品大手2社からヒントを得た「配当政策ってどうなるのだろうか?」(1/3)

 

こんにちは、IHGsokenです。
本日は、昨日の続きで各社の決算説明会資料を読んでいこうと思っていたのですが、久しぶりに中野誠『戦略的コーポレートファイナンス』(日経文庫、2016年)を読んでおり、ふと食品セクターの配当政策について調べてみたくなり、まずはアサヒ、キリンHDについて調べてみようと思います。

 

戦略的コーポレートファイナンス (日経文庫)

戦略的コーポレートファイナンス (日経文庫)

  • 作者:中野 誠
  • 発売日: 2016/08/11
  • メディア: 新書
 

 

まずは、アサヒ【2502】の配当政策について。配当性向35%を掲げております。

配当方針(政策)について
当社は、「中期経営方針」において、「Asahi Group Philosophy」に基づく“グローカルな価値創造経営”の推進に取り組み、創出されるフリー・キャッシュ・フローにより、財務体質の改善を図るとともに、M&Aなどの成長基盤への投資に活用する一方で、株主還元では、2021年度までに配当性向(※)35%を目指した安定的な増配を実施する方針です。

※ 配当性向は、親会社の所有者に帰属する当期利益から事業ポートフォリオ再構築にかかる一時的な損益(税金費用控除後)を控除して算出しております。
https://www.asahigroup-holdings.com/ir/shareholders_guide/dividendinfo.html

事実、ここ数年のアサヒの年間配当は、

2017年 75円(配当性向28.6%)
2018年 99円( 〃  30.1%)
2019年 100円( 〃  32.2%)

と配当性向35%目指して近づいております。

 

続いて、キリンHD【2503】。

配当方針
株主の皆様への適切な利益還元を経営における最重要課題の一つと考えており、1907年の創立以来、毎期欠かさず配当を継続しております。2007年度からは、利益成長と連動性を高め、連結配当性向30%以上を目安とし、成長に応じた配当を実施してきました。各期の業績、実質的利益水準を勘案した連結配当性向及び今後の経営諸施策等を総合的に考慮のうえ、安定した配当を継続的に行うことが、株主の皆様の要請に応えるものと考えております。
2013年度からは平準化EPSに対して30%以上の連結配当性向を目安としておりましたが、さらなる株主還元強化を図るべく2019年度より連結配当性向を30%以上から40%以上に引き上げることとしました。

https://www.kirinholdings.co.jp/irinfo/stock/dividend.html

配当性向はアサヒより高めの「40%以上」に2019年度より引き上げたとのこと。
しかし、とても気になる言葉があります。

1907年の創立以来、毎期欠かさず配当を継続しております。

 

そもそも配当政策って株価に、ひいては企業価値に影響があるんでしたっけ??

 

『戦略的コーポレートファイナンス』には、「MM配当無関連命題」と「配当のシグナル効果」の2つが紹介され、最適な配当政策に関する理論は存在しないということが書かれております。
「MM配当無関連命題」とは、「みずほ証券×一橋大学 ファイナンス用語集」によると、

MM配当政策無関連命題とは、1961年にMillerとModilianiによって示された命題であり、「完全資本市場の仮定の下では、企業の配当政策は企業価値に影響を与えない」という命題である。

この命題では、配当と自社株買いは完全に代替的であるために、ペイアウト政策の選択が企業価値に影響を与えないということを含意している。

https://glossary.mizuho-sc.com/?site_domain=default

 また、京都大学の藤井教授のゼミ研究によると、

(1)製造業、商業において、配当額と増配がシグナルとして機能していること
(2)サービス業においては配当のシグナリング仮説が否定されること
(3)どの業種においても減配はシグナルとして機能していないこと
(4)配当と 2 期・3 期先利益の関連性は弱いこと
が明らかになった。

https://core.ac.uk/download/pdf/39319769.pdf

とのこと。

 (長くなってきましたので、次回につづきます。。。)