IHGsokenの日記

中小企業診断士 兼 証券アナリスト による財務分析よりも手前の基本的な疑問点について考える

証券アナリストの視点で「年金の2000万円不足問題」をわかりやすく読む(1/3)

「年金の2000万円不足問題」って??

昨年(2020年)の6月3日に公表された金融審議会の市場ワーキング・グループ報告書にある「老後の毎月約5万円の収入不足を補うには約2000万円の貯蓄が必要」という試算のことであります。


こちらの資料、私もしばらくはニュースでしか知らず、原本を読んでいなかったのですが、実際、読んでみると、当時批判のやり玉に挙がっていた

「年金の100年安心は虚偽である」

「試算に一般性がない」

といった点よりも、資産運用の基本として、現状をしっかり把握するという事実に重きを置かれていて、分かりやすい報告書となっています。


是非、一度原本に目を通してみてください。

https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603/01.pdf 

 

では、早速、読んでみましょう!全56ページですが、非常にまとまっています。

まず、タイトルは…当然「年金2,000万円不足問題」みたいな表題がついているわけではありません!

【タイトル】

金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書
「高齢社会における資産形成・管理」
令和元年6月3日

 

つづいて目次がございます。

【目次】

1.現状整理(高齢社会を取り巻く環境変化)
(1)人口動態等
(2)収入・支出の状況
(3)金融資産の保有状況
(4)金融環境に対する意識
2.基本的な視点及び考え方
(1)長寿化に伴い、資産寿命を延ばすことが必要
(2)ライフスタイル等の多様化により個々人のニーズは様々
(3)公的年金の受給に加えた生活水準を上げるための行動
(4)認知・判断能力の低下は誰にでも起こりうる
3.考えられる対応
(1)個々人にとっての資産の形成・管理での心構え
(2)金融サービスのあり方
(3)環境整備
おわりに

 

簡潔にまとまっておりますが、少し取っつきにくい印象はあるかもしれません…

「市場ワーキング・グループ」 のメンバーはというと、神田秀樹先生(学習院大学大学院法務研究科教授)がまず座長として名が載っております。
会社法の著名な学者の方でして、私も会社法を学ぶ際には参考にさせていただきました。

 

委員の方は、座長+20名!

大学教授が6名、弁護士の先生が1名、その他エコノミストの方や投資関連の代表などが13名となっております。

ここから、項目ごとにざっくりとまとめていこうと思います!

はじめに

・人口減少・高齢化の進展 

「人生100年時代」に備えた資産形成の重要性

1.現状整理(高齢社会を取り巻く環境変化)

・平均年齢は男性約81歳、女性約87歳

・現在60歳の人の1/4は95歳まで生きる

・「健康寿命」は、男性約72歳、女性約75歳

 私のような1980年代生まれは何歳まで生きられるのでしょうか。

 

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・持家比率の低下が特に60歳未満で著しい

・結婚後、夫婦と子供、親と同居し、持ち家を持ち、老後の親の世話は子供がみるというようなかつて標準的と考えられてきたモデル世帯は空洞化している

・軽度認知症の人の数は約 400 万人と推計

・65歳以上の4人に1人が、認知・判断能力に何らかの問題を有している

・高齢夫婦無職世帯の平均的な姿で見ると、毎月の赤字額は約5万円

・65歳以上の勤労状況は他国に比して高い(65 歳から 69 歳の男性の 55%、女性の 34%が働いている)

・退職金給付制度がある企業は約80%

・平均金額は、 1,700 万円~2,000 万円(ピーク時から約3~4割減少)

 かつてのように、企業に入りそれなりに貯蓄をし、退職金と年金で優雅な生活というものは幻想になりつつあるようです。

 

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・65 歳時点における金融資産の平均保有状況は、

・夫婦世帯:2,252万円

・単身男性:1,552 万円

・単身女性:1,506 万円

・「老後の生活設計を考えたことがある」と回答した人は、全体で 67.8%

老後に対する不安要因として「お金」

 65歳時点における資産としてはそれなりにあるのではないかと思いますが、こちらの数字はローンなどを控除する前の数字となっていますので、ネットの資産はもう少し少なるようです。

また、あくまで「平均」ですので。例えば、100人にひとり10億円保有している人がいれば、平均は1,000万円押し上げられてしまいますので、統計数値の読み方にも注意です。

 

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・資産寿命を延ばすために必要なこととしては、「現役で働く期間を延ばす」、「生活費の節約」、は「若いうちから少しずつ資産形成に取り組む」

投資を行わない理由

・「まとまった資金がない」

・「投資に関する知識がない」

・「どのように有価証券を購入したらよいのかわからない」

 投資を行わない理由としては、この3つがよく挙げられます。

全くその通りだと思いますが、まとまった資金がない時こそ、時間を味方につけて、長期投資でしっかりと資産を形成すべきだと思います。または、サラリーマンであれば、給与所得以外のキャッシュフローを作り上げるべきだと思います。

 

現状整理の確認は以上です!

後半は、次回に続きます。

簡単に金利計算できる「72の法則」

年代別の老後への不安要素としては、
「お金」に関してがトップに来ています。

しかしながら、お金の備えを十分にしているという人は
非常に少ないのです。

その理由の一つとして、過去は
貯金をしていれば安泰だった時代が存在したからです。

先日も知人の資産運用の相談に乗っていた際に、
「おじいちゃんの時代は、比較的裕福だった。
1億円の預金が10年で2億円になった。」
とおっしゃる方がいました。

ここでFPならおなじみの「72の法則」
というものがございます。
72÷「金利」で簡便的に2倍になるまでの年数が算出できるというものです。
例えば、金利が「7.2%」だとすると、
72÷「7.2」=10
すなわち、約10年で2倍になるということです。

簡単な計算で、金利を身近に感じられますので、
是非、お使いください!

【算出例】「72の法則」
1%:72÷1=72年
2%:72÷2=36年
3%:72÷3=24年
4%:72÷4=18年
6%:72÷6=12年
8%:72÷8=9年
12%:72÷12=6年

しかし、現在の金利は残念ながら「マイナス金利」…。
節約して、預貯金に入れていけばお金が増える時代は、
とっくに終焉を迎えているのです…。

食品大手2社からヒントを得た「配当政策ってどうなるのだろうか?」(3/3)

こんにちは、IHGsokenです。

前回からの続きです。

 

ihgsoken.hatenablog.com

 

大問題点

ROIC、WACC の算定方法に恣意性が入ってしまうという点です。

ROIC や WACC を実際に計算すればわかりますが、数字をちょっと変えれば結果は大きく変わります。現実に数億円単位のキャッシュの流出を伴う配当政策に対して、数字を少しいじれば大きく出力の変わるものを意思決定の「参考」にするのは良いとして、意思決定の「判断基準」にすることは経営上大きなリスクを伴ってしまいます。

この問題を乗り越えられる業種に関しては、「ROIC vs WACC」の考えを活用できると思います。配当や自社株買いの株主還元政策が上手くいっているケースとしては、ビジネスとして好調な時にはキャッシュがだぶつき(良い時はすごく良い業種)、資本効率が悪化する業種が多いのです。

具体的企業でいえば、株主還元の教科書に良く出てくる大東建託が挙げられます。

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大東建託:15 年間で 5,000 億円の株主還元政策(純利益 5,500 億円)

しかし、例えば、ディフェンシブと言われる小売業においてキャッシュがだぶつくのは SPA がある程度進んでいる、ファーストリテイリングニトリ、受注型ビジネスのしまむらくらいではないでしょうか。

(コロナ禍以前であれば、株高の資産効果やインバウンドの恩恵に与る百貨店、ドラッグストアなどもあるかもしれません。)
つまり、高水準の株主還元を行う必要もないし、還元するくらいなら将来投資に使う方が良いという業種も多いのではないでしょうか。

 

実際にはどうなっている?日本の配当。配当政策の動揺 ~日本企業の配当政策~


次はここ 10 年ほどの実際の日本企業の配当政策の流れ(歴史)を見ていきたいと思います。最近流行の業績連動型の配当政策は 2000 年代初頭から日本には浸透し始めました。

2002 年 業績連動型の急速な浸透  ←背景には、「敵対的買収」、「モノ言う株主」の増加


しかし、2008 年のリーマンショックで軒並み減益になると、早速業績連動型配当政策の限界が見られました。つまり、業績が伸びたから増配をするという文脈は皆が受け入れられるが、反対に業績の下降による減配は実際問題として受け入れがたいようなのです。

2009 年~減益局面での業績連動型配当政策の限界 ←減益だからといって、「減配」する企業は少ない


✔「流行り」には要注意
業績連動型配当政策についての問題点としては、企業が増益基調の時はうまく機能するが、減益基調になると混乱してしまうという点にあります。
また、

 

業績連動型配当政策 → 利益・配当の変動率↑ → 株価の変動率↑


株価のボラティリティが大きくなることで、資本コスト↑ → 株価↓(企業価値の毀損)ということで、中長期的な業績の右肩上がりが確実な状況以外での業績連動型配当政策にはややデメリットが大きいように思います。


■仮説検証
配当政策に関しては、実証的な研究も進んでおり、下記の代表的な 3 つの仮説が存在します。
ファイナンス理論と比べ、事実をもとに導き出されている印象です。)

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配当政策に関する代表的な 3 つの仮説

これらを石川博行氏による日米における検証を参考にまとめると、以下のようになります。(参考文献をご参照ください。)


配当に関する「神話」検証 in アメリ


シグナリング仮説 → ×不支持(認められない)
②代替仮説 → ○支持(有配当企業の割合 1978 年 66.5%→1999 年 20.8%)
③ライフサイクル仮説→ ○支持 ex.マイクロソフト(1975 年創業、2003.01 配当開始)


背景:FCF(フリーキャッシュフロー)問題
裁量性の高い FCF が削減されることにより、経営に規律が生まれ、エージェンシーコストが下がるという考えがあると思われます。

 

配当に関する「神話」検証 in 日本

 

シグナリング仮説 → ○支持(認められる)
「増益→好業績」、「現役→悪業績」
市場は配当シグナルの信頼性を利益と組合わせて判断している?
②代替仮説 → ×不支持(認められない)
配当の下方硬直性がある?
→ 配当のシグナル力向上 → 株価との関連性上昇
③ライフサイクル仮説 → ×不支持(認められない)
持続的な高成長・高収益、豊富な余剰資金・財務内容な企業が増配を行う
(成熟企業よりも、成長企業が増配する傾向)

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配当に関する「神話」検証 in 日本
Cf.ライフサイクル仮説の盲点

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配当が株価に向けている“メッセージ”

上記の検証結果によると、日本市場においては、投資家は配当の持つ「シグナル」を評価していると言えます。では、配当はどのようにシグナルとして機能しているのでしょうか?


「配当」…投資家と経営陣の情報の非対称性を緩和する役割を持つ


このことから、「配当政策の数値目標化」(ex.「配当性向 30%目標」)は、下記のようなリスクもはらんでいると言えます。


✔ 経営陣の意思決定の放棄とも捉えられる
✔ 機械的な配当水準の決定は、投資家との対話不要を意味する

 

配当政策の数値目標についての問題点


配当政策の数値目標=「配当性向〇〇%目標」
配当とは、売上高・利益等とはちがい、すでに獲得した利益の分配です。そこから、
→ 経営陣に将来的な努力を引き出すという意味合いは小さい
機械的な配当政策は、株主とのコミュニケーションの機会を犠牲にする可能性がある
→ IR の視点から問題と言えます
ただし、現実的には、時価総額筆頭のトヨタも配当性向は明示しており、配当性向の数値目標そのものが駄目ということではなく、なぜその数字なのかという質問に答えられるだけの根拠を「対話」を通じて答えなければならないということでしょう。


配当政策が株価に影響を与えるメカニズム


日本市場(企業)には、「コロボレーション効果」が見られると言われています。コロボレーションとは、「確証」、「裏付け」の意です。
配当政策に対して、投資家が企業を信頼しているかどうかによって株価(≒企業価値)が変化すると考えられています。(企業価値は、「C(収益性)」を「r(リスク)-g(成長性)」で割ったものと表せます。

つまり、企業に対するrが小さくなれば、「C/r-g」は大きくなる。企業経営者と投資家の間の情報の非対称性は、「r」に該当するため、情報の非対称性が小さくなれば、株価は高くなるという理屈です。)

こちらについては、下記の本が勉強になりました。

 

バリュエーションの教科書

バリュエーションの教科書

  • 作者:明, 森生
  • 発売日: 2016/05/27
  • メディア: 単行本
 

 


増配シグナルと成長シグナルのベクトルが一致している企業では、
「増配」
→ 首尾一貫した配当政策
→ 市場の信頼獲得
→ 情報の非対称性↓
→ 資本コスト↓
企業価値↑=株価↑


ベクトルが不一致の場合は、株価上昇効果は小さい。すなわち、
✔ 成長企業の増配 → 追加的なプラスの効果
✔ 成熟企業の増配 → 割り引かれた効果しか得られない

 

【結論】

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配当政策に関する結論

長々と書いてしまったが、結論としては、この一行だけでいいのではないかと思います!

 

まとめ


配当に込められた首尾一貫した経営陣のメッセージが企業価値(株価)を上昇させる!


「首尾一貫した」=単年度の政策ではなく複数年度で継続的に増配する企業の株価が高い
「経営陣のメッセージ」=×「機械的」配当政策(業績連動型等)だけでは×
投資家との対話不足は、企業の資本コストを上昇させてしまう。
企業価値の上昇」首尾一貫 → 信頼(予測可能性)
対話 → 情報の非対称性↓ → 資本コスト↓ → 株価↑

 

以上です。

 

今回の参考文献↓↓ 本当に参考になりました!ありがとうございます。

 

 

 

 

 

食品大手2社からヒントを得た「配当政策ってどうなるのだろうか?」(2/3)

こんにちは、IHGsokenです。昨日の続きで配当政策のあり方について書いてみたいと思います。 

そもそも、なぜ配当政策が企業にとって重要かと考えると、配当政策が株価に影響を与えているからであるとも言えます。

また、なぜ株価が重要かと言えば、(従業員の視点から言えることは、)買収リスク低下のためには、買収防衛策の導入よりも株価を高く維持することの方がずっと重要だからです。

資本市場における流動性労働市場における流動性はまったく異なり、株が売り買いされるように従業員も出たり入ったりすることは難しいのです。そう考えると、企業の最重要なステークホルダーである従業員を守るためには、「高株価政策」は経営の要中の要であると言えます。

また、配当と株価はある程度の「相関」関係はあると言えます。しかし、「相関」があるからといって「因果」もあるかは分からない。

では、両者に「因果」関係もあるのでしょうか?まず、事実(ファクト)の確認から。株価の本質を考えると、究極的には、売りと買いが同時に成立しているのが株価であると言えます。売ったり買ったりする人のことを投資家と呼びます。


では、投資家はいったい何故、株を売り買いするのだろう???

改めて投資家について考えてみます。

投資家の 4 つの投資スタイル

マッキンゼーによると、投資家は 4 つのタイプに分類できます。

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投資家の 4 つの投資スタイル

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投資家の 4 つの投資スタイル (詳細)

ここから読み取れることは、配当政策を考える企業の立場からは、企業の本源的価値を探求する「本来価値への投資家」に注目すべきと言えます。

つまり、「綿密に調査し、少数の会社に多額の投資をする」タイプの投資家に投資してもらうことが大切なのです。

「配当政策」についてファイナンス理論では…?

次に、理論的には、配当についてどう考えられているかを確認します。

ファイナンス理論では、そのあたりのことを現実離れしたくらいシンプルに考えています。
「ROIC(投下資本利益率)と資本コスト(WACC)の比較で決める」ということです。

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株主から資金を託されて事業をし、託された資金以上の大きさにして、一定期間後に株主に返すという建付けになっているので、「余剰キャッシュは株主に還元せよ」というのはファイナンス理論的にはまったく正しいのです。

しかし、ここには実務上の大きな壁があると感じます。

(次回へ続く)

参考図書は下記の3冊!

マッキンゼーのは第6版も出ていますので、そちらも要チェックであります。

新・企業価値評価

新・企業価値評価

  • 作者:伊藤 邦雄
  • 発売日: 2014/07/24
  • メディア: 単行本
 

 

 

バフェット氏による商社株保有のニュースについて

こんにちは、IHGsokenです。


今日は、「米バークシャー、日本の5大商社株約5%取得」についてのニュースについて思い出したことがありました。

https://jp.reuters.com/article/berkshire-hathaway-japan-idJPKBN25R00R

 

私のお気に入りの作家でもあります黒木亮氏の『トップ・レフト』の冒頭に、1980年代に20世紀末の上位10社のグローバル・バンクリスト作りが金融関係者で流行ったという『国際金融の内幕』からの引用がある。

そこに記載されている「日本勢」という記述が日本の総合商社を指しているのではないか?ということがまことしやかに囁かれている。

『国際金融の内幕』の原著を当たれれば真偽のほどに近づけるのかもしれませんが、入手できずにおります…。

 

トップ・レフト 都銀vs.米国投資銀行

トップ・レフト 都銀vs.米国投資銀行

 

 

 

 

食品大手2社からヒントを得た「配当政策ってどうなるのだろうか?」(1/3)

 

こんにちは、IHGsokenです。
本日は、昨日の続きで各社の決算説明会資料を読んでいこうと思っていたのですが、久しぶりに中野誠『戦略的コーポレートファイナンス』(日経文庫、2016年)を読んでおり、ふと食品セクターの配当政策について調べてみたくなり、まずはアサヒ、キリンHDについて調べてみようと思います。

 

戦略的コーポレートファイナンス (日経文庫)

戦略的コーポレートファイナンス (日経文庫)

  • 作者:中野 誠
  • 発売日: 2016/08/11
  • メディア: 新書
 

 

まずは、アサヒ【2502】の配当政策について。配当性向35%を掲げております。

配当方針(政策)について
当社は、「中期経営方針」において、「Asahi Group Philosophy」に基づく“グローカルな価値創造経営”の推進に取り組み、創出されるフリー・キャッシュ・フローにより、財務体質の改善を図るとともに、M&Aなどの成長基盤への投資に活用する一方で、株主還元では、2021年度までに配当性向(※)35%を目指した安定的な増配を実施する方針です。

※ 配当性向は、親会社の所有者に帰属する当期利益から事業ポートフォリオ再構築にかかる一時的な損益(税金費用控除後)を控除して算出しております。
https://www.asahigroup-holdings.com/ir/shareholders_guide/dividendinfo.html

事実、ここ数年のアサヒの年間配当は、

2017年 75円(配当性向28.6%)
2018年 99円( 〃  30.1%)
2019年 100円( 〃  32.2%)

と配当性向35%目指して近づいております。

 

続いて、キリンHD【2503】。

配当方針
株主の皆様への適切な利益還元を経営における最重要課題の一つと考えており、1907年の創立以来、毎期欠かさず配当を継続しております。2007年度からは、利益成長と連動性を高め、連結配当性向30%以上を目安とし、成長に応じた配当を実施してきました。各期の業績、実質的利益水準を勘案した連結配当性向及び今後の経営諸施策等を総合的に考慮のうえ、安定した配当を継続的に行うことが、株主の皆様の要請に応えるものと考えております。
2013年度からは平準化EPSに対して30%以上の連結配当性向を目安としておりましたが、さらなる株主還元強化を図るべく2019年度より連結配当性向を30%以上から40%以上に引き上げることとしました。

https://www.kirinholdings.co.jp/irinfo/stock/dividend.html

配当性向はアサヒより高めの「40%以上」に2019年度より引き上げたとのこと。
しかし、とても気になる言葉があります。

1907年の創立以来、毎期欠かさず配当を継続しております。

 

そもそも配当政策って株価に、ひいては企業価値に影響があるんでしたっけ??

 

『戦略的コーポレートファイナンス』には、「MM配当無関連命題」と「配当のシグナル効果」の2つが紹介され、最適な配当政策に関する理論は存在しないということが書かれております。
「MM配当無関連命題」とは、「みずほ証券×一橋大学 ファイナンス用語集」によると、

MM配当政策無関連命題とは、1961年にMillerとModilianiによって示された命題であり、「完全資本市場の仮定の下では、企業の配当政策は企業価値に影響を与えない」という命題である。

この命題では、配当と自社株買いは完全に代替的であるために、ペイアウト政策の選択が企業価値に影響を与えないということを含意している。

https://glossary.mizuho-sc.com/?site_domain=default

 また、京都大学の藤井教授のゼミ研究によると、

(1)製造業、商業において、配当額と増配がシグナルとして機能していること
(2)サービス業においては配当のシグナリング仮説が否定されること
(3)どの業種においても減配はシグナルとして機能していないこと
(4)配当と 2 期・3 期先利益の関連性は弱いこと
が明らかになった。

https://core.ac.uk/download/pdf/39319769.pdf

とのこと。

 (長くなってきましたので、次回につづきます。。。)

 

食品セクター11社の時価総額ランキング(2020/8/28終値ベース)&決算説明会用資料

こんにちは、IHGsokenです。


下記は、日経225を構成する食品セクター11社の顔触れです。


このうち6社が時価総額で1兆円を超えております。
(※2020/8/28時点で時価総額1兆円超の企業数は123社。覚えやすい!)
では、どの6社が1兆円超でしょうか?

【2002】日清粉G
【2269】明治HD
【2282】日ハム
【2501】サッポロHD
【2502】アサヒ
【2503】キリンHD
【2531】宝HLD
【2801】キッコマン
【2802】味の素
【2871】ニチレイ
【2914】JT

 

上記は証券コード順になっているので、時価総額(2020/8/28終値ベース)順に
並べ替えてみます。

 

【2914】JT     3,956,000百万円 15ページ
【2503】キリンHD  1,869,587百万円 59ページ
【2502】アサヒ    1,775,244百万円 29ページ
【2269】明治HD   1,297,809百万円 59ページ
【2801】キッコマン  1,103,195百万円 35ページ
【2802】味の素    1,087,343百万円 37ページ

【2002】日清粉G   532,626百万円 40ページ
【2282】日ハム    499,865百万円 29ページ
【2871】ニチレイ   389,351百万円 32ページ
【2531】宝HLD   195,306百万円 54ページ
【2501】サッポロHD 147,267百万円 59ページ

 

時価総額の右側には直近通期の決算説明会用の資料の分量を
記載しました。

最少15ページ~最多59ページとなっております。
不思議なことに59ページの会社が11社中3社もございました。

食品業界はBtoCということもあってか、アナリスト向けの決算説明会と
個人投資家向け説明会を分けて開催されていたり、
決算説明会資料にスクリプト付のものを掲載されたりと
個人投資家に寄り添う情報開示の姿勢が垣間見えました。

各社ごとの具体的な決算説明会資料の特徴については
次回以降にお伝えしたいと思います。